トップ > 高野山奥之院唐櫃奉納

将来の国宝を作る

「将来の国宝を作る」を合言葉に唐櫃制作は始まりました。形状は格式の高い檜皮葺き唐破風屋根の取り付いた独自の形です。全体的には天然檜材の素木造りですが、部分的に黒漆、金色の透し金具、赤い房、繧繝彩色等を施し、平安調の雅びな雰囲気が醸し出る様にしています。

職人仕事には材料を作る職人と道具を作る職人、それらを使って物を作る職人がいます。この唐櫃制作でも、天然木曽檜柾材の選定、縁付け五毛色の金箔製作、特殊鋸の製作から始まりました。大工仕事では「菊天秤の逆」と言われる幻の組手が隅留めに施され、轅には黒漆の布着せ蝋色仕上げに透かし金具、四本の脚はアワビ貝の輝きを最高に引き出す為0.1ミリまで薄くしたもので宝相華紋を螺鈿し、上下には透かし金具で宝相華紋をいれました。胴中央部の格狭間には、下地には金箔その上に花狭間と言う組子細工に木彫の密教法具を取り付けました。密教法具の材料はインド産の本白檀で、今では入手困難なものです。箱棟の鬼板にはいつまでも変色のしない岩絵具で繧繝彩色され、その箱棟の中に、人間国宝の岩野市兵衛さんの漉かれた奉書紙に参加した職人名と、協力頂いた賛同者のご芳名が記され納めてあります。

まさに、職人の技と心を結集させた唐櫃となりました。

高名な高野山に自分の手の跡が残る事は職人として大変誇り高い事であり生き甲斐です。

日本の伝統職人文化を次代へ継ぐために、これからも当会職人一同尽力して参りたいと思います。

私たち職人の意向にご参同いただいた高野山の皆様、そしてお力添えをいただいた多くの方々には、改めて御礼を申し上げます。

作業場で完成した唐櫃

唐櫃に内蔵された職人名一覧

隅留めに施された「菊天秤の逆」

格狭間に取り付けられた密教法具

脚部装飾

唐櫃完成披露会

高野山奉納に先駆け、唐櫃の一般公開を行いました。関わった職人たちが各々に細部に渡る解説をし、3日間で約2,500人の来場者で賑わいました。

唐櫃奉納

平成31年4月24日、高野山金剛峯寺にて厳かに奉納式が行われました。

厳かに担ぎ出された唐櫃

奉納式の翌日、弘法大師の旧正御影供の際に唐櫃が初めて担ぎ出されました。日常に使用するのはこれまで同様のものを、奉納した唐櫃は特別なハレの日用として今後も使用されます。平素は金剛峯寺に展示されるとの事です。

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